現代では、インターネットや携帯電話などのデジタル情報通信技術のない暮らしはもはや想像することができません。人々のライフスタイルが変わりつつあるだけでなく、産業構造が変わり、政治すらも変わりつつあります。日本は、1990年代にはデジタル情報通信技術の採用が遅れていると批判されることもありましたが、2000年以降、急速に普及し、光ファイバの利用では世界でもトップランナーになっています。
しかし、情報通信技術の及ぼす影響は良いことばかりではありません。プライバシーの侵害や間違った情報の普及、詐欺行為、自由な情報の流通の疎外、サイバー攻撃といわれるような新しい問題も生み出しています。新しい技術によって政治、経済、社会、文化が変わっていくとき、新たな問題が生まれ、それに対処する方策を考えなければなりません。
そして、情報通信技術が与える影響は、先進国だけではなく、アラブの春に象徴されるように、台頭しつつある国々にも及び、グローバリゼーションの駆動力になっています。インターネットをはじめとする情報通信技術がもたらす変化のガバナンスは、いまや国際問題になりつつあるのです。
情報社会への移行を進める日本の経験は、時に「ガラパゴス化」ともいわれるように、ユニークな側面を持っています。それは必ずしも世界のトップを走っているという意味ではなく、東アジアや日本の文脈に縛られたものではあります。しかし、これも文明のひとつの進化を示しており、現代における日本研究の重要な一側面です。先進国ばかりではなく、これから情報通信技術の採用を進める国々にとっても得るところがあるでしょう。
本研究グループでは、「困難な問題の解明、解決」という意味を持つ「レゾリューション(resolution)」をキーワードに、日本をモデルとしながら、未来の世界を考えるためのシナリオ作りと政策のデザインを考えます。