日本が少子高齢化と人口減少の社会に向かう速度は、世界の他の国や地域と比較しても非常に速くなっています。社会保障制度や税制度の問題、国土構造や地方分権の問題など、少子高齢化と人口減少の社会を迎える上で解決されるべき課題は、もはや待ったなしの状態です。中国・韓国・台湾なども、今後、日本と同様の人口構造になると予想されています。これらの国や地域では、現在日本が抱えている政策課題と共通の課題解決に迫られると考えられ、現時点において課題先進国日本の少子高齢化社会について国際共同研究を推進することは、大きな意義があります。
本研究グループでは、少子高齢化社会の「メゾ・ガバナンス」に関する研究に取り組みます。本研究の領域は、医療、看護、年金、労働、教育、住宅、地域などの分野にまたがっています。その課題解決のために、政策領域(例えば、医療と交通)と空間スケール(市町村や都道府県といった行政境界にとらわれない広域圏や小地域、公共圏)においてメゾ(中間的)なガバナンスや制度設計について、実証的で実践的な研究を行います。
具体的には、例えば日本の温泉観光地と世界の温泉観光地とを結び、インバウンドとアウトバウンドの観光を促進する国際共同研究を進めています。この政策課題ひとつとっても、人口減少社会における交流人口の増加策、健康と観光、レジャー施設整備における官民連携や国土計画制度のあり方、不動産市場における住宅・オフィス分野の成熟後の観光分野への転換とビジネスモデル、「6次産業」と言われる観光関連産業の展開の仕方、観光人材育成など、その成功と失敗を含めて、まさに日本が好例となっているのです。
少子高齢化と人口減少の社会を迎えているとはいえ、限られた労働力人口や国土資源を効率的・効果的に活用して、一定以上の生活水準を維持している日本の姿は、いずれ同じような局面を迎える国や地域にとって、ひとつのモデルになるでしょう。